とまとの肥料は「フランス料理」


 私は施設でトマトを栽培しています。不耕起栽培をしている為、元肥は一切入れていません。肥料はもっぱら液肥です。農協で購入するトミー液肥(ブラック)の他に、オリジナルブレンドの液肥を3種類作りそれを順番にとまとに与えています。
 このやり方をしている時、ふと、これは「フランス料理やな」と思ったのです。フランス料理は食べ物が順番に出て来ます。一つを全部食べきってから次の料理を待ちます。


それにくらべ、日本の懐石料理や中華料理などは、一度にたくさんの料理が出てきて、好きな物から食べる事が出来ます。日本には、料理を別々に口に入れて、噛みながらミックスした味を楽しむという「口中調味」と言う食文化があります。しかし、とまとの肥料(特に養液栽培)はこの口中調味ではダメなのです。


 
 とまとの成長に必要な栄養素は、有名なNPK(窒素、リン酸、カリ)の他にも、H2O(水)、O2(酸素)、CO2(炭酸ガス)、C(炭素)、Ca(カルシウム) 、Mg(マグネシウム) 、B(ホウ素)、金属類等、他たくさんあると思います。しかも健全に育つには、これらがバランスよく吸収されることが条件になると考えます。その為には、これらの栄養素をブロック分けして順番に与える事が効率よく吸収させる方法だと思っています。

 実際、これらを一度に混ぜて液肥を作ろうとしても(やった事はないですが)どろどろになってとても使い物にならないと思います。灌水チューブがたちまち詰まってしまうからです。大事なことはチューブが詰まるほど分子を大きくしては作物に吸収されにくいということです。混ぜても濁らない液肥を作るにはどうしてもいくつかのブロックに分ける必要があるのです。

 具体的にフランス料理に置き換えて各液肥のブロックの説明をすると・・・・

 まずはスープ。名付けて「 カルシウムスープ 」。これをフランス料理に置き換えると味わいの深いコンソメスープ?? このカルシウムを効果的に吸収させることは大変難しいことです。このカルシウムは他と仲が良いのか悪いのか・・・単独で与えなくてはいけません。これはやはり仲が良いのでしょう。他の物と混ぜるとすぐにくっついて白く濁ってしまいます。私は30アールのハウスに消石灰4sを70リットルの水に溶かしその上澄み液を与えています(どれだけ溶けたのかは不明)。透明なのに味がめっちゃ濃い。それがカルシウムスープなのです。ホウ素を加えればいっそう美味しくいただけます。


 

次にオードブル。私の作るオードブルはかなり濃いです。
 位置付けはメインのサブ。メインディッシュの補佐役です。メインで足りない物を補います。K、Mg、リン酸、その他微量要素を補足します。おまけに、微生物の活性を促す2糖類のサッカロース。これらを混ぜます。ハッキリ言って相当濃いです。メインに近いです。これに当てはまるオードブルを私は知りません。
 強いて名付けるとしたら 「 ミネラルオードブル 」 ??


 
   (余談)
     リン酸が効くととまとの赤い色が濃くなります。マグネシウムが効くととまとの中のゼリーの緑色が濃くなります。しかし、リン酸が効き過ぎると、ゼリーが赤くなってしまいます。効きすぎは禁物。
     ある物が効きすぎるとその影響である物が欠乏症状を起こす。
    その物は有るのに欠乏症状を起こす・・・むずかしいですね〜〜〜〜〜〜。



 メインディッシュは間違いなくステーキ。これはやはりJAで購入するトミー液肥でしょう。この液肥はとまとの成長に必要な栄養素の大部分を含んでいます。原液は醤油の様な黒い液体です。黒と言えば炭素。有機化合物の元になるのが炭素だと言うことを考慮すると、この黒い液体というのが醤油・・・・もとい「みそ」なのです。しかし、酸性の強いメインディッシュだけだと土は酸性に傾いてしまいます。やはりアルカリ性のカルシウムスープやミネラルオードブルが必要なのです。


 食後にはデザート。とまとのデザートは過酸化水素水。根に酸素を送ることによって根を元気にさせます。今日も快調!!と言うところでしょうか。ついでに灌水チューブもすっきり。一石二鳥です。


 最後に食事を素敵に演出してくれる「ワイン」。これにはEM活性液を当てましょう。これは全ての液肥と混ぜても白濁しません。まさにオールマイティー。おまけに土の中に固定しているリン酸化合物(これが厄介)やカルシウム化合物(有るのに吸収されない)などを分解する手助けをします。小さい分子になればこれ幸い。言わずもがなです。
 ついでに農薬も分解してくれればと思っているのですが・・・手応えは感じています。
 しかし、落とし穴も有ります。ワイン同様飲み過ぎはいけません。活性が強いだけに諸刃の剣です。餌が無くなればどんな状態になるのか想像もつきません。餌であるバーク堆肥は絶対に不可欠です。土づくりはどんな時でもとても重要です。

 

 以上書いたことが、とまとの肥料が「フランス料理」たる由縁です。
ここで注意しなければならないことが有ります。それは、灌水の配管のなかで交じってしまっては元も子もないと言うことです。特にカルシウムスープの前後は要注意です。その時は前後3分は交じらない様に水を流します。私は自分でタイマーを細工して灌水の時間と液肥混入器の時間を自由に設定出来るようにしています。



 最後に、ここまで書いてきたことは全て私の持論であり、科学的に証明された事では有りません。また、養液土耕と言うたいへん限られたテーマで話しを進めてきましたが、普通の露地栽培や有機栽培にも通じる物が有ると信じ書いてきました。どうぞご了承下さい。